漢方医学では独特の観点から病気をとらえ、漢方薬もそれに基いて用いられます。漢方の特性を知り、 自分に合った薬を使ってこそ、漢方薬のよさも生かせます。
漢方薬を適切に用いるためには、まず向き不向きを知っておく必要があります。
一般に、手術の必要な病気や殺菌・除菌を優先すべき感染症などには、漢方治療は向きません。
やはり、西洋医学にまかせたほうがよいでしょう。
一方、検査では異常がないが症状はあるというような場合は、漢方治療が向く病気といえます。
胃や腸の病気でいえば、胃腸虚弱であったり、特別な病気もないのに便秘や下痢などの症状があるといった場合です。
女性では、月経障害や更年期のさまざまな症状などです。
ただし、漢方治療により症状が改善されるため、ときに、症状の背後にある重大な病気を見逃してしまうこともあります。 そのため、まず西洋医学の検査・診断を受けて病気の有無を確認したうえで漢方薬を使うのが基本です。
身近なところでも漢方が使われています。 | |
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大正漢方胃腸薬 | 縮宿(シュクシャ) シュクシャ ショウガ科の種子の塊 甘草(カンゾウ) カンゾウ マメ科の根 延胡索(エンゴサク) エンゴサク ケシ科の塊茎 良姜(リョウキュウ) リョウキュウ ショウガ科の根茎 桂皮(ケイヒ) ケイ クスノキ科の樹皮 牡蠣(ボレイ) カキ カキ科の貝殻 芍薬(シャクヤク) シャクヤク ボタン科の根 |
ハルンケア | ジオウ・ブクリョウ ・ケイヒ ・タクシャ ・サンシュユ・ 炮附子 ・ボタンピ ・サンヤク |
養命酒 | インヨウカク ・ウコン ・ケイヒ ・コウカ ・ジオウ ・シャクヤク ・チョウジ ・トチュウ ・ニンジン ・ボウフウ ・ヤクモソウ ・ウショウ ・ニクショウヨウ ・ハンピ |
ユンケル | ・コウジン ・イカリソウ ・反鼻チンキ ・カシュウ ・ガラナ ・サンヤク ・クコシ ・サンザシ ・ジオウ ・ゴミシ ・サンシュユ ・トチュウ ・トシシ ・ブクリョウ ・トウキ ・バクモンドウ ・オンジ ・カンゾウ ・オウギ |
漢方薬の処方は「陰・陽、虚・実」の証から考えます。
漢方医学では、治療にあたって独特のみかたで病気をとらえます。
それを漢方の「証(しょう)」をとるという言い方をします。
そのとき基本となるのが「陰・陽」「虚・実」のものさしです。患者さんが寒さに支配された「陰」の状態なのか、熱に支配された「陽」の状態なのか、また、体力のある「実」の状態か、体力の低下した「虚」の状態かを判断します。
漢方薬は、患者さんが図のような「陰・陽、虚・実」のどのゾーンにいるかをみて、過ぎたところを中央へ戻す処方が択ばれます。 冷えていれば温める、あまり熱がありすぎれば冷ますといった具合です。
Q)冬になるとよくカゼをひきます。カゼに漢方薬は効くのでしょうか?
A)漢方医学は生薬を使う日本の伝統医学です。
中国漢の時代の世界最古の感染症治療マニュアル「傷寒論」を最重要の古典書として発展してきました。患者さん一人一人の体質や病気の時期、状態によって生薬を使い分けて治療を行います。カゼのひき始めには葛根湯、小青竜湯などの麻黄を含む漢方薬で発汗を促します。
ただし、胃腸の弱い人には麻黄を含まない桂枝湯、香蘇散を選択しやさしく発汗させます。カゼをひいて数日たち少し長引いた時には小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴朴湯などの柴胡を含む漢方薬を用い、体内の悪いものを柴胡で中和させます。また老人のカゼなど陰と呼ばれる病態であれば、麻黄附子細辛湯、真武湯などの附子剤で体を温めて治します。カゼの回復期やカゼを繰り返す場合なども適切な漢方薬を使用することにより免疫を高め早期の回復やカゼにかかりにくくする効果が期待できます。このように漢方薬を適切に使用することでカゼに対して有効な治療法となります。
ご興味のある方は一度お近くの医院でご相談ください。
漢方薬を効果的に用いるためには、上手な飲み方を知っておくことも大切です。
最近の研究によると、漢方薬のある成分は、私たちの腸内にすむ細菌によって分解され、有効な成分になることがわかっています。
ほかの食べ物といっしょになると、それだけ分解能力が落ちて、漢方薬の効きめが悪くなります。
また、腸から吸収されて血液中に入る率も低くなってしまいます。
そのため、漢方薬の効果を十分に発揮させるには、空腹時に飲むのが理想です。
漢方薬は、多くの場合、西洋薬との併用が可能です。
飲み合わせによる問題を防ぐため、医師と相談して用いてください。
併用する場合は、時間をずらして飲むようにするとよいでしょう。
現在、一般に使われている漢方薬はエキス剤が主流になっていますが、もともとは煎じ薬ですから、お湯に溶いて元の形に戻して飲んだほうが、本来の効果が発揮されやすいのです。
特に冷え性や胃腸虚弱の人は、温かくして飲むことがすすめられます。